死滅回遊【岩礁のみちを歩いて】

旅の中で

通常は回遊する性質がない魚たちが熱帯の海から黒潮に流されて伊豆半島や三浦半島沖までやってきます。そして海流はこのあたりで日本列島から離れていきます。そこに残された魚たちは冬の寒さにより、繁殖も出来ずに死に絶えていきます。これを「死滅回遊」や「無効分散」と呼ぶそうです。しかし海水温度の上昇や個体の変異などにより、生き残り命を繋ぐものが出てくる可能性もあるわけです。故郷の熱帯のほうで何かが起こったり、地球温暖化が進めば流された個体が種の繁栄のカギにもなり得ます。そうすると「死滅」や「無効」ではなくなってきますね。種として、こういった一見「残念な運命」の個体が出てくるようになっているのかもしれません。
そんなことを考えていると鮭の話を思い出しました。
回遊魚の鮭。ほとんどは故郷の川へ遡上するといいますが、カラフトマスは母川回帰性が弱く別の川へも遡上するようです。普通に考えれば生まれた川へ遡上するのが正解でしょう。故郷の川も開発などで短期間のうちに環境が変わっている可能性は否定できませんが、それでも産卵して次の世代に命を繋げる可能性は比較的高いでしょう。他の川はどこまで上っていけるのか、産卵に適した場所があるのか全くわからないのです。しかしおっちょこちょいの個体たちは未知の川を上っていきます。その結果、他の鮭や鱒と比べ、カラフトマスは生息域を広げていったそうです。
自然界はそんなことだらけなのかもしれません。
そうやって生き残ってきた種も沢山いるのでしょう。
なんだかすべての生き物が輝いて見えてきます。
おっちょこちょいに幸あれ。

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